低PERで割安な銘柄を選んで購入しても、株式投資で稼げない理由とは?
株式投資を実施する場合、投資手法は様々あります。
その中でも、最も王道と言えるのが、「安く買って、高く売る」と言う投資手法になります。
「当たり前じゃん!」
と言われそうですが、必ずしも投資家の多くが「安く買って、高く売っている」訳ではありません。
例えば、良くある手法としてのが、「高く買って、更に高く売る」と言った手法があります。
しかし、何れの投資手法を用いた場合でも、「買い」でエントリーした場合は、買った値段より高く売り抜けなければ損をしてしまうことになります!
そのため、自分が買った株価が、どの程度の値段で買えているかということを理解しておくことは、株式投資を実施する上では不可欠の知識となるのです。
この、株価がどの程度の高値なのかと言うのを判断する際に、良く使われる指標が「PER」となります。
そもそも、低PERとはどのような状況のことなのか?
冒頭にも申し上げましたが、株式投資において「安く買って、高く売る」と言う投資をしている方は多いと思います。
そのため、このPERが「低く」なっていれば購入すると言う人もいるのではないでしょうか?
しかし、残念ですが、単純にPERが低くなっている株式銘柄をスクリーニングで抽出し、購入すると言うだけでは、株式投資で稼げるようになるのは厳しいのが現実なのです!
では、なぜ低PERの銘柄だけを抽出して投資しても、稼げるようにならないのかについて触れさせて頂きます。
そもそも、PERとは「株価収益率」のことです。
算出式で言うと、
株価 ÷ EPS(一株当たりの利益)
です。
単純化して言うならば、株価が1,000円の会社があったとして、1年間100円の利益を稼ぐとするならば、1,000円÷100円で、PERにすると10倍になります!
例えば、この会社を購入したいと思った場合、1,000円なら売ってあげるよと、マーケットで言われているのと同じことです!
この場合、毎年100円稼ぎ続けてくれれば、10年で投資元本は回収出来ることになります。
そして、11年目からは儲けになる訳です。
よって、10年で投資額を回収出来るならば「買う価値がある」と判断すれば、この株式を購入すれば良いと言うことになるのです!
つまり、PERとは投資資金の回収速度を表す指標ということが出来るのです!
株式投資は、低PERだから儲かるという単純なものではない!
先ほどの例では、1,000円で買った会社が、毎年100円の利益を出せる場合、10年で利益を回収できると説明しました。
つまり、PER10倍の状況です。
では、PERは何倍であれば良いのでしょうか?
勿論、PERが何倍であれば、割安なのかと言うのは、投資をする時期や、業種、その企業の個別事情などによって判断は変わってきます。
但し、こうした判断が難しい場合は、PER10倍以下であれば一般的に割安と言われることが多いので、10倍以下を1つの指標として判断するのも良いかと思います。
では、PER10倍以下の銘柄を抽出して株式投資をすれば、稼げるようになるのでしょうか?
当然ですが、株式投資はそれほど単純ではありません!
このPERの意味を、更に深堀して理解する必要があります。
例えば、先ほどの例を思い返してみると1,000円で買った会社が、毎年100円の利益を出せる場合、10年で利益を回収でき、11年目から利益になると説明しました。
PER10倍の状況です。
しかし、ここで確認しなければならない重要な観点があります。
それは、この100円と言う利益が、どのようなものなのかということです。
この会社が、日々の企業活動による利益の追求で100円と言う利益を稼ぐ力があるならば問題ありません。
しかし、この100円が、例えば資産の売却など、一時的な要因によってもたらされたものである場合、来年度はどうようの利益が出る可能性は低くなってしまいます。
良くあるのが、古い会社で創立時から保有していた土地を売却することによって、一時的に利益を出すと言ったようなことです!
当然、来期はこうした土地はありませんので、同じような利益を出すことは出来ません。
従って、今季限りの一時的な利益と判断しなければなりません!
先ほどの例で言うならば、本来は20円程度の利益しか稼ぐ能力のない会社であったが、土地の売却で一時的に80円の特別利益が出ているような状況です。
もし、この会社の来季以降の利益水準を、今期のような特別利益を含めて100円の利益で計算してしまうと、この会社の実力以上の評価をしてしまうことになります!
そのため、今期は合計で100円の利益になっているとしても、来期からは20円で計算すべきなのです。
以上より、本来は1,000円÷20円=50をしなければなりませんので、回収するのは50年掛かってしまうことになるのです!
そのため、今期の利益水準からすればPER10倍で割安に見えるかもしれませんが、実態はPER50倍であると判断するのが妥当と考えられるのです!
低PERが良いと言う訳でもないし、高PERがダメという訳でもない!
では、単純にPERが低ければ良いのでしょうか?
当然ですが、そんなに簡単なものではありません。
例えば、PER50倍の場合、投入した資金を回収できるのは50年後となるので、、かなり割高に感じるかと思います。
しかし、以下の2つの観点から、高PERである50倍だからと言って単純に対象外にすれば良いという訳ではないのです。
1.企業の利益水準の変化の見抜く必要がある!
例えば、1,000円の株価に対して、この会社の利益が20円の場合は、PERが50倍ということになります。
しかし、この会社の実力値を分析したところ、来期は200円の利益をの出せると判断出来た場合は、どうでしょうか?
この場合、1,000円÷200円で、PERは5倍と判断出来ます。
もし、こうした状況をマーケットが把握していない場合、本来はPER5倍の株価で放置されている状況ともいえるので、「買い」となるのです!
2.高PERは、人気が集まっている証拠である!
では、1,000円の株価に対して、この会社の利益を出す実力値が20円だった場合は、買いは控えた方が良いのでしょうか?
PERは、計算式通り50倍ということになります。
この場合、投資対象となるのでしょうか?
当然、答えは決まっておらず、投資対象外としてしまうかは、その人の投資スタイルによって変わってきます。
ここで、高PERと言うことを、単純に考えてみたいと思います。
当たり前のことですが、PER50倍となっているということは、投資額を回収するのに50年掛かるとしても、マーケットではこの銘柄を欲しいと言う人がいるということです!
何を言いたいのでしょうか?
それは、冒頭でも少し触れさせて頂きましたが、株式投資は「安く買って、高く売る」以外の手法を取っている人も多数いると言うことです!
この辺りの詳しい説明は、別の投稿で記載してますので、この記事では詳細は割愛させて頂きます。
つまり、PERが50倍と高かったとしても、それ以上に株価が高くなると言う確証があるならば、買値よりも高く売って利益を出せば良いと考える人がいるのです!
特に、バイオ企業であったり、小型成長株などの場合、将来大化けする可能性があるとの判断から、株価が高くなりがちです!
こうした銘柄の場合、人気が人気を呼んで、高PERの場合でも、更に株価が上昇することが良くあります!
株式投資は、利益を得ることが重要であることは間違いありませんので、こうした手法であっても利益が得れるのであれば、投資対象銘柄と考える人もいるのです!
更に、短期で大きな利幅が取れる可能性も高いので、資金効率も高くなります!
高PER銘柄に投資するのは危険ではないのか?
では、こうした高PER銘柄に投資するのは、危険ではないのでしょうか?
これは、対象銘柄の状況によって、答えは変わってきます!
例えば、PER50倍という数値であっても、この会社の本来の実力値で換算すると低PERのような状況になっているのであれば、問題ないと考えます。
これは、先ほどの例で言うと、「1」のような状況の場合です。
「1」の場合、実質的には、PERは5倍とも言えるからです。
しかし、「2」のような場合は、勿論投資手法にもよりますが、危険を冒したくないのであれば、避けておく方が無難です!
当然ですが、人気銘柄は出来高が集中し、一気に株価が上昇することが多くあります!
そのため、「2」のような銘柄は、短期間で大きな利幅が取ることが可能となります!
そのため、こうした取引では、短期間に大きな利益を出すことが可能です。
しかし、こうした人気先行の銘柄で、将来の利益水準に対する期待が剥落した場合、株価は大暴落する可能性があります!
ご存じの方も多いでしょうが、株式市場における大幅な下落として「サンバイオショック」というものが、直近でも発生しています。
サンバイオとは、創薬ベンチャー企業のことですが、1月29日に新薬の臨床試験が不調に終わったことを発表すると、発表に失望した人による売りが殺到し、ストップ安となりました。
しかし翌日以降もストップ安が続き、2月5日に価格が約定した時には、下落前に1万2千円以上を付けていた株価が2400円付近となり、数日で5分の1程度まで株価が暴落をしてしまいました。
このように、高PERの人気株は、人気が剥落した場合は、一気に株価が暴落する可能性があると言うことを、良く理解しておかなければ極めて危険なのです!
低PERだけの会社に、投資をしても儲からない理由とは?
では、やはり低PERの会社に投資すれば良いと言うことなのでしょうか?
難しいのは、低PER銘柄に投資すれば儲かるとも言えないのが、株式投資の難しいとなのです!
当然ですが、低PERの銘柄は割安な状況で、マーケットに放置されているという訳です!
それはなぜか?
それは、仮に割安であっても、その銘柄を欲しいと言う人が少ないからです!
株価が1,000円で200円の利益を出せる会社の場合、PERは5倍となります。
しかし、今後も利益が200円の場合、株価はずっと1,000円のままとなる可能性が高いのです!
低PERの会社が、割安なまま放置される理由とは?
当然、個人投資家の場合は、株式投資で利益を出す場合は、株価の変動によるキャピタルゲインと、配当によるインカムゲインしかありません。
仮にこの会社が無配だった場合、インカムゲインはありませんので、株価の上昇によるキャピタルゲインによって儲けるしかありません。
しかし、例えPERが5倍で割安な状況であったとしても、株価が上がる見込みがないのであれば、この会社を幾ら買ったからと言っても儲けることが出来ないのです!
先ほどの例で言うならば、200円の利益がマーケットから評価されていない場合、このまま200円の利益を出し続けていてもマーケットの評価は変わらずに、株価は上昇する見込みは薄い状況となってしまうのです!
こうなると、こうした会社の銘柄は、更に人気が離散し、低PERで放置されるだけと言うことになってしまうのです。
このように考えれば、単純に低PERであると言う理由だけで、株式を買ってはいけないということが理解して頂けると思います。
低PERと言う指標は、銘柄選定において意味が無いのか?
では、低PERという指標は、銘柄選定において意味を持たない指標なのでしょうか?
いえ、そんなことはありません!
と言うのは、やはり低PERであるということは、株価が下落し難いという特性を持っているのです!
これは、投資をする上で、非常に重要なことです!
株式投資では、常に勝てるとは限りません!
そのため、負けた時の額を如何に小さくするかと言うのが重要になって来ます。
低PERと言うことは、負けた時の額を小さくできる可能性が高まりますので、やはり高PERの銘柄ばかりを取引するよりも、安全性を高めることが期待できるのです!
PERが低い・高いと言うのは、現時点の状況を示す指標に過ぎない!
以上の説明からも分かる通り、PERが低い・高い、と言うのは、現時点の利益状況を示す指標に過ぎないと言うことが、理解いただけたかと思います!
マーケットのにおいて、決算発表書の内容など、誰が知り得る材料から単純に計算した数値と言うものは、皆に知れ渡っている情報となりますので、原則として株価に織り込まれていることとなります!
そのため、重要なのは、現時点の指標がどう言ったものであるかということを分析して把握すると同時に、こうした指標が、今後どのように「変化」していくのかということを見極めることが重要となります。
そして、そうした「変化」に気が付き、それがまだマーケットには知れ渡っていないのならば、事前に先回りする形で投資をすれば、その銘柄から儲けられる可能性が高まるのです。
そのためには、こうした「変化」を見抜く力を磨き続け、リスクを恐れずに資金を投入できる「胆力」を持ち合わせることが、不可欠となるのです!