株式の中長期投資では、損切り(ロスカット)は本当に必要ないのか?

株式投資を実施する際に、中長期投資では損切り(ロスカット)は必要ないという声を聞くことが良くあります。

本当に、中長期投資では損切り(ロスカット)は必要ないのでしょうか?

確かに、スキャルピングやデイトレード、スイングトレードなどの、短期投資においては損切りが重要であると言う話は良く聞きます。

では、なぜ中長期投資になると損切りについて、余り重要視されなくなってしまうのでしょうか?

まず、中長期取引において、損切をしなかったために陥りやすい罠について触れてみたいと思います。

中長期投資において、損切り(ロスカット)はなぜ必要なのか?

では、少し例を出して、説明してみたいと思います。

例えば、ある企業の株価の推移が、以下のような状況だったとします。

損切

現時点では、株価は1700円を超えた程度なのですが、この企業をファンダメンタル分析した結果、1700円が適正価格と判断したとします。

しかし、1700円付近で買ってしまうと割安感がありません。

当然、投資を実施する際には、適正価格との乖離が必要です。

市場に過小評価されることで割安に見過ごされていた株価が、適正に評価されることによって、株価の上昇が期待できます。

所謂、バリュー投資的な考え方です。

割安と判断して、株式を【A】の位置で購入!

現在の1700円を超える株価が、1600円付近まで下がったら購入しようと判断をし、この銘柄を監視することにしたとします。

暫くの間の監視を経て、やっと株価が1600円付近まで下落しました。

ずっと待ち続けたチャンスがやっと来たため、このたタイングを逃してなるものかと思い、【A】の位置で1600円で購入することにしました!

そして、株価は時間の経過と共に、適正価格である1700円に将来的には戻るはずなので、それまでホールドすると判断をしたとします!

勿論、このまま想定通り1700円まで株価が上昇すれば問題はありません。

しかし、株式のマーケットは、それほど甘くないのです!!

外部環境の悪化に伴って、株価が一気に暴落!

折しも、急激に外部環境が悪化し、多くの銘柄が暴落し始めたとします。

すると、この企業の業績見込み自体に変わりは無いものの、外部環境に引きずられて、一気に株価は【B】の1400円まで下がってしまいました。

当然、1600円で買っているの、大きな含み損を抱えることになります。

しかし、このタイミングでは、企業業績が悪化した訳ではないので、当初のストーリーは崩れていません!

そのため、このタイミングで損切りは実施せず、ホールドすることにしました。

外部環境のマインドが改善し、株価が上昇に転じる!

その後、外部環境のマインドが改善し、それにつられて株価も上昇に転じ始めました。

しかし、自分と同じように【A】の位置で購入した人が市場には多くいるため、1600円付近になると、含み損を解消された投資家による売却が多く発生します!

そのため、もう少しで当初の予定である1700円に到達しそうだったのですが、株価上昇の頭が抑えられてしまい、1600円付近に分厚い壁が出来上がってしまいます。

そして、【C】の1600円付近で揉みあう状況となってしまいました

株価が目標まで上昇する前に、企業業績が悪化し、株価が再び暴落する!

そうしているうちに、外部環境の悪化が現実的になり、それに伴ってこの企業の業績の先行きの不透明になり、将来の利益予想が下落に転じてしまったとします。

すると、適正株価は一気に見直され、一気に【D】のラインまで下がってしまいます。

損切り(ロスカット)が出来ずに、塩漬け株が出来上がる!

こうなると、大きな含み損を抱えた状況となってしまいます。

仮に、損切りに慣れてなかったり、そもそも損切りの基準を自分自身の中に持っていない人は、大きすぎる含み損を切るという判断が下せず、いつか株価が1600円までは戻ると信じてホールドしてしまうことになります。

こうして、塩漬け株が出来上がってしまうのです。

中長期投資と言えども、損切り(ロスカット)ルールは不可欠である!

このような状況にならないためには、中長期投資と言えども、損切りに対するルールを持っておく必要があります。

当然、正解と言うものはないので、自分なりのルールを確立する必要があります。

ロスカットタイミング(その1)

例えば、【A】の位置で買った場合、仮に1550円を下回ったら、企業業績の動向に関わらず、一旦、損切りして手仕舞いをするというルールでも良いと思います。

これはどちらかと言うと、スキャルピングやデイトレード、スイングトレードなどの、短期投資の時によく使われる、テクニカル分析による損切りとなります。

当然、企業業績が変わっていないので、株価は再び上昇する可能性はあるのですが、一方で損失は限定することが可能となります。

ロスカットタイミング(その2)

しかし、中長期投資をしている方は、ファンダメンタル分析をベースに投資をされている方が多いのだと思います。

そのため、ロスカットタイミング(1)のような状況での損切り(ロスカット)は、敬遠されがちです!

理由としては、この企業の本源価値が1700円と想定する場合、1400円まで下がると乖離率が更に広がり、寧ろ割安感が増すことになります。

つまり、安全率が高まった状況となるため、損切りをする理由が成り立たないからです!

こうなると、損切りと言うよりは、寧ろナンピンをすべきか迷うと言う状況となります。

仮に、購入当初のストーリーが崩れない限りは、銘柄をホールドすると言うルールで投資を行っているのであれば、仮に【B】位置まで株価が下がってもホールドすると言うのは理に適っているとも言えます。

そして無事に株価が上昇に転じたとして、【C】のラインで株価が上昇したとします。

この辺りは、需給の関係から、株価が揉みあう可能性が高いのですが、需給が改善されれば、再び上昇に転じて1700円のラインまで上昇する可能性がありますので、購入時のストーリーが崩れていない限りは、ここでもホールドは有りだと思います。

損切り(ロスカット)を躊躇し、塩漬け株が出来上がる!

しかし、問題はその後の対処です。

【C】のラインで株価が揉みあっているうちに、この企業の業績自体が悪化に転じた場合、正に、このタイミングで購入当初のストーリーが崩れてしまったことになります。

そのため、直ぐにこの銘柄を売却すると言う判断を下すべきなのです!

しかし、自分の中の損切りのルールが曖昧な場合、【C】の位置では含み損を抱えた状況なので、損切りを躊躇してしまいがちになります!!

そうしているうちに、一気に株価が崩れて【D】のラインまで下がってしまい、後はいつ上昇するともわからない株式を、「上がってくれ!」と祈りながらホールドするだけとなってしまうのです。

ただ、このような状況になってしまった場合、株価が早期に1600円まで戻る可能性は、殆ど無いと言うのが現実なのです・・・。

投資の初心者は、業績分析に慣れておらず、損切り(ロスカット)のタイミングを逸することが多い!

上記は、一つの例に過ぎませんが、やはり中長期投資と言えども、損切りに対するルールを持っておくことは不可欠です。

例えば、先の例で言うと、【A】の位置で買った場合、仮に1550円を下回ったら、企業業績の動向に関わらず、一旦、損切りして手仕舞いをするというルールは、どちらかと言うと短期取引の損切りに近い考え方となります。

そのため、こうした損切りのやり方は、中長期投資の基本的な考え方とは相反する部分がありますので敬遠されがちです。

しかし、私自身としては、特に投資を始めたばかりの方は、上記のような考え方で損切りをするというのもありだと思います。

と言うのは、投資を始めたばかりの方の場合は、企業業績の動向を見極めるのに慣れておらず、損切りのタイミングを逸してしまうということが良くあります。

また、仮に分かったとしても、損切りに慣れておらずメンタル的な観点から、損切りが出来ずに塩漬け株を作ってしまったということも良くあることなのです。

しかし、投資を実施していく中では、投資から利益を出すと言うよりも、寧ろ損失を如何に抑えて行くかということが重要だったりします。

この考え方は、短期投資でも中長期投資でも同様です。

よって、損失を最小限に抑えるために、投資のやり方に慣れるまでは、1550円を下回ったら損切りをして、改めて底値を見定めてから、改めて【B」の位置でエントリーするという方法でも良いのだと思います!

自分なりの損切り(ロスカット)ルールの確率が重要である!!

繰り返しになりますが、上記の例で言っても、どちらの損切りが正しいというものはありません。

それどころか、上記の他にも損切りをするタイミングや考え方は、色々とあります。

大切なのは、中長期投資だから損切りは不要であるという頑な姿勢は捨てて、もう一度、本当に損切りをしなくても良いのかということを真剣に考えてみる必要があるのだと思います。

その上で、自分なりのルールを確立し、粛々とルールに則って対処して行くことが大切なのだと思います!!

因みに、株式やFXなどの投資を始めた方が、こうした投資ルールを自分なりに確立し、どのようなステップを経て勝てるようになって行くかについては、以下のページに詳しく纏めてありますので、ご参考にして見て下さい。